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地霊殿の「お燐の服の模様を描く」職人の朝は早い。

夜も明け切らぬ内から職人の一日は始まる。
まずは冷水で身を清める職人、
これは冬であっても変わらない日課なのだと言う。

次に職人は1本の筆を取り出し丁寧に手入れを始めた。

―その筆だけで描かれるんですか?

「ええ、これだけです」

―1本しか使わないのには何か拘りでも?

「特に無いですが……一番使い慣れていると言うか、まあ、拘りと言えば拘りですか」

―服を着せてから描くんですね。

「やはり身に付けた時に最も映える様に描く為にはこれが一番ですから」

―描きづらくはないですか?

「非常に気を使うポイントが何箇所かありますね。
 繊細に筆を進めないと、少しでも気を抜くとすぐに線がぶれてしまう……
 ……ああ、これ以上はちょっと」

―企業秘密、と言う奴ですね?

「まあ、そんなところです」

たっぷりと2時間、
全く集中を途切れさせる事無く職人はその日の模様を書き終えた。
一度の洗濯で落ちてしまうのでその都度新たに書き直すのだという。

―何故そんな手間を?

「やはり洗う事でしっかり落ちないと染みにもなりますしね。
 変に色あせたりしているのは見るに耐えないでしょう?」

―なるほど、拘りですね。

「そんなところです」

今日の仕事を終えた職人、
しかしこれからまた仕事道具の手入れと
明日の為の準備に取り掛かるのだという。
床につくのはいつも深夜だという事だ。

―大変ですね。

「まあ、好きでやってる事ですから」

―それでは最後に、この仕事をやっていて嬉しかった事、そして辛かった事は?

「そうですね、やはりいい模様が描けた時、喜ぶお客さんのお顔を見れた時が一番嬉しいです。
 そして辛かった事は……そうですね、敢えて言うなら……と、言う夢を見たんだ……ですかね」

―本日はどうも有難う御座いました、それでは皆様、良い夢を。